ECサイトや通信販売の需要が高まるなか、自社の物流システムに課題を抱えている企業も多いはず。また、業界問わず人手不足を原因とした職場環境の悪化を実感している方もいることでしょう。
無人搬送車(AGV・AMR)は、そのような課題の解決に向けた大きな一歩となるツールであり、製造業や物流関係だけでなく医療業界や学校などでも導入されています。本ページでは、無人搬送車(AGV・AMR)の基本的な情報やAGVとAMRの違い、使用するメリット・デメリット、おすすめの企業や製品などを紹介しているので、業務の自動化や効率化に向けてぜひご一読ください。
まずはAGVの基本的な定義や主要な機能、種類について説明します。
AGVとは「Automatic Guided Vehicle」の頭文字をとった言葉で、日本語では「無人搬送車」と呼ばれることが多いです。工場や倉庫で物資を運搬する車両で、プログラムされたルートに従って動きます。
AGVはフォークリフトや台車などと異なり、基本的に人間の操作を必要としません。床に貼られた磁気テープやQRコードなどに基づいて自動で走行を行うため、物流システムの効率化に大きく貢献します。
AGVの主要な機能として、以下が挙げられます。
種類には牽引型や低床型、フォークリフト型などがあります。牽引型は大量の荷物運搬に向いており、低床型は狭い空間などでも柔軟に動きやすいなどそれぞれ特定の用途に適した特徴をもっているため、機能と種類を考慮して業務のニーズに最適なモデルを選定することが大切です。
AMRはAGVよりも高度な自律性を持ち、物流業界に新たな可能性をもたらしています。目的によってはAMRのほうが適している場合もあるため、AMRについても知識を深めましょう。
AMRは「Autonomous Mobile Robot」の略で、日本では「自律走行搬送ロボット」と訳されています。その名のとおり自律的に動くことが特徴で、AGVよりも複雑な環境での運用が可能です。また、磁気テープなどの誘導体が不要なので運用時の柔軟性が高まります。
荷物の運搬などAGVに搭載された機能に加えて、AMRには以下の機能もあります。
AMRは、その高度な自律性と柔軟性により、多様な業務への対応が可能です。AGVと同様の低床型や牽引型に加えて、RFIDシステムとの連携によりピッキングの効率を高めた製品やタッチパネルで操作を行う製品などがあり、機能・性能も多岐にわたります。
AGVとAMRの大きな違いは、「人と協働できるか」です。AGVはあくまで「Vehicle(車両)」ですが、AMRは「Robot(ロボット)」であり、同じ「搬送」が目的であっても機能面や柔軟性が大きく異なります。
ただ、それぞれ異なる機能と用途をもつAGVとAMRですが、いずれも業務効率化のための重要なツールです。費用対効果を最大限に高めるためにも、これらの違いを理解して自社に合った自動化ソリューションを選択しましょう。
AGVは、主に定められたルートに沿って物資を運搬することに特化した製品です。磁気テープやQRコードによって指定されたルートを走行するため、比較的単純な作業に適しています。
AMRは、環境を認識して障害物を回避する能力を有しています。不規則なルートや変化する環境にも柔軟に対応でき、人との協働作業もスムーズに実行できます。
AGVは、製造ラインや倉庫内での定型的な物資運搬に最適です。たとえば、製品の組み立てラインから倉庫への運搬など、繰り返し行われる作業に使用されます。
AMRは、より複雑な環境やタスクに適しています。たとえば、倉庫内でのピッキング作業など人間との協働を必要とする作業に活用でき、搬送にかけていた時間を70%削減できたという事例もあります。
AGVとAMRは導入には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。これらのメリットとデメリットを総合的に考慮し、企業の具体的なニーズと状況に合わせた適切な判断を行うことが重要です。
無人搬送車(AGV・AMR)のメリットは主に以下の3つです。
無人搬送車(AGV・AMR)は、物資の運搬を自動化することで作業効率の大幅な向上を実現。さらに人間の作業者に代わって作業を行うため、環境の安全性を高めたり人的負担を軽減したりできます。また、人件費の削減や作業の効率化によって、長期的にはコスト削減につなげることも可能です。
一方、無人搬送車(AGV・AMR)のデメリットには下記があります。
無人搬送車(AGV・AMR)は導入コストが高いため、初期投資に対するROIを慎重に計算する必要があります。また、物流システムが変更となるため、運用やメンテナンスに専門知識が必要です。導入の際には適切な指導を受けるとともに、トラブル発生時に物流がストップしないようにサポート体制も確認しましょう。
AGVとAMRの価格は、種類や機能、技術的な複雑さによって大きく異なり、一般的に1台あたり数十万円から数百万円が目安です。基本的なモデルは比較的手頃な価格で提供されていますが、カスタマイズや高度な機能を備えたモデルは価格が高くなります。
また、AGVやAMRは導入コストに加えて、バッテリー・部品交換などのメンテナンス費や修理費用も必要です。ただ一方で搬送業務を人からAGV・AMRに置き換えることで省人化でき、長期的には人件費の削減が期待できます。さらにAGVやAMRは24時間の稼働ができる製品もあるため、総合的に見ると生産性の向上も実現可能です。
無人搬送車の導入を検討する際には、これらの要因を考慮し、業務のニーズと予算に合った選択を行うことが重要。また、長期的なROI(投資収益率)を考慮することも、コスト効率のよい導入には不可欠です。企業によっては無人搬送車(AGV・AMR)のレンタルを行っているところもあるので、まずは導入効果を確かめてから本格的な運用を開始するのもよいでしょう。
無人搬送車の市場規模は5,000億円超えと推定され、特に製造業や物流センターでの需要が高まっています。また、自動化技術の進化や労働力不足の解消、作業効率の向上などがさらに進むことから2026年には9,000億円を超える見込みであり、無人搬送車の市場はさらに拡大するとの予測です。
一方、無人搬送車(AGV・AMR)の導入を検討している企業に対しては、労働力不足への対応や物流効率化を目的とした「モーダルシフト等推進事業」などコスト面から支援する補助金制度もあります。一定のコストが必要となる無人搬送車(AGV・AMR)ですが、将来的なコスト削減を見据えて導入を検討するのもおすすめです。
物流業界における自動化の進展に伴い、多くのメーカーが高品質なAGVやAMRを提供しています。以下に、特におすすめのメーカーをいくつか紹介します。
上記以外にも、無人搬送車(AGV・AMR)は優れたメーカーが国内外にあります。日本の代理店が存在するため、海外の製品であってもスムーズな導入が可能。それぞれの分野で高い評価を受けており、物流業界における業務効率化に大きく貢献しているため、自社のニーズに合った最適なメーカーを選択することが重要です。
無人搬送車(AGV・AMR)のメーカーを選ぶ際には、以下のポイントに注意してください。
これらのポイントを踏まえて自社に最適な無人搬送車のメーカーを選択することが、業務効率化への第一歩です。無人搬送車(AGV・AMR)は長期稼働を前提として導入することがほとんどなので、必ず複数の製品・サポートを比較したうえで進めていきましょう。
最後に、無人搬送車を導入するまでの流れを説明します。導入や運用のイメージをつかみ、理解を深めていきましょう。
現在の物流プロセスを徹底的に分析し、自動化によって改善可能な領域を特定。効率化やコスト削減、安全性向上など具体的な目標を設定し、導入の方向性を明確にします。
AGVとAMRの市場を広範囲に調査し、各メーカーの製品ラインナップや機能、価格を比較。自社の目的に合致するメーカーを選定します。
選定したメーカーと協力して、導入計画を策定。設置場所、運用スケジュール、必要な設備の構築を含めた計画を立て、導入に伴うリスクを評価してプランニングを行います。
選定した無人搬送車を現場に設置します。既存のシステムと統合してから実際の業務環境でテスト運用を行い、問題点を特定。必要に応じて調整を行います。
テスト運用を経て、無人搬送車の正式運用を開始。運用後のパフォーマンスを定期的に評価し、プロセスの改善や追加投資を行いながら業務の自動化と効率化を実現します。
無人搬送車(AGV・AMR)は、物流業務の効率化に貢献する重要なツールです。ただ導入するだけでは運搬業務を楽にするだけですが、企業に適した製品を見極めて導入することで、人手不足の解消だけでなく生産効率の向上などにも役立ちます。
無人搬送車(AGV・AMR)にはそれぞれ特定の機能や性能、価格があり、「まとめて運搬したい」「ピッキングを効率化したい」など企業のニーズに合わせた選択が可能です。製品の機能と価格を比較することで最適な判断に近づくため、ぜひ資料請求をご活用ください。